𝐄𝐩𝐬𝐨𝐧 𝐃𝐒−𝟓𝟑𝟎⑤

　本や書類（しょるい）のスキャンをやっていると、普段（ふだん）手で扱っている時には気付かない問題（もんだい）がいろいろと見えてくる。

　まず第一に、本が意外（いがい）と長方形（ちょうほうけい）じゃないという事。フラットベッドスキャナーの時は手動（しゅどう）で対象（たいしょう）を設置（せっち）しているのでどうしても斜（なな）めになってしまう。だから不要（ふよう）な部分（ぶぶん）を切り取（と）って傾きを調整（ちょうせい）するというのは最初（さいしょ）から当たり前（まえ）の事として考（かんが）えていた。しかし、原稿（げんこう）自動（じどう）送り装置（そうち）を使（つか）うスキャナーでは裁断（さいだん）のさいに斜（なな）めに切ったり、紙を送る際に歪まない限り、正（ただ）しく認識（にんしき）されるはずで、また、自動（じどう）傾斜（けいしゃ）検知（けんち）機能（きのう）で画像（がぞう）を補正（ほせい）もしてくれる。すると、一見（いっけん）四角（しかく）く見える紙も実は上辺（じょうへん）と下辺（かへん）が平行（へいこう）になっていないという事が、余白（よはく）の発生（はっせい）ではっきりと確認（かくにん）できるようになった。そして紙に対して正（ただ）しい角度（かくど）で印刷（いんさつ）されていない物が多（おお）い事も。手で触って目で見ている分には気にならない程度（ていど）の傾きも、四角（しかく）い枠で囲まれたパソコンの画面（がめん）で見（み）ると目立（めだ）って見える。補正（ほせい）の許容（きょよう）範囲（はんい）をどうするかは人によって違（ちが）うが、どこまで追求するかは先人（せんじん）の話（はなし）を参照（さんしょう）すると、もうその人次第（しだい）で、時間（じかん）や手間（てま）との衡量（こうりょう）になるとは知らされていた分、それほど迷いは無（な）い。「慣れ」の要素（ようそ）も大（おお）きいし、こだわっても自分（じぶん）の技術（ぎじゅつ）や知識（ちしき）が磨かれたり、新しい技術（ぎじゅつ）や製品が出てくるともう一度（いちど）やり直したい気持（きも）ちにもなってしまい切りが無（な）い。奥深さと哲学（てつがく）を持った「自吸道（じすいどう）」のような世界（せかい）がある事は解かる。他人（たにん）の体験（たいけん）談を読んでいる分には面白（おもしろ）い。詳細（しょうさい）に記録（きろく）を取（と）りながら臨めば、本一冊（いっさつ）書けるかも知れない(笑)

　𝟏𝟒日（じゅうよっか）に新たな本の奥深さを体感（たいかん）した。𝟐𝟎𝟎𝟕年﹦平成（へいせい）𝟏𝟗年の『文芸（ぶんげい）春秋（しゅんじゅう）』が次のスキャン対象（たいしょう）になった。普段（ふだん）読むような雑誌（ざっし）ではないが、ちょうど田舎（いなか）へ行く用事（ようじ）があり移動（いどう）中や行った先での暇潰し（ひまつぶし）に買（か）った物だったろうか？詳しい経緯（けいい）はおぼえていないが、𝟑月（さんがつ）号で𝟏月（いちがつ）に発表（はっぴょう）のあった芥川賞（あくたがわしょう）受賞（じゅしょう）作品（さくひん）が掲載（けいさい）されているので、ひょっとしたら已前（いぜん）感想（かんそう）を書（か）いているかも知れない。もしそうなら買（か）った動機（どうき）も判明（はんめい）するだろう。あとで調べておく。

　雑誌（ざっし）のような複数（ふくすう）の記事（きじ）の集合（しゅうごう）体を電子（でんし）化（か）して保存（ほぞん）する場合（ばあい）、筆者（ひっしゃ）や内容（ないよう）など記事（きじ）ごとに分ける方法（ほうほう）と、雑誌（ざっし）全体（ぜんたい）を𝟏冊としてまとめる方法（ほうほう）とに大（おお）きく分かれる。作業（さぎょう）は𝟏冊でまとめる方が楽だが、あとで探す場合（ばあい）は内容（ないよう）ごとに分かれている方が捜しやすい。媒体（ばいたい）ごとにどうするかはある程度（ていど）決めてあるが、『文芸（ぶんげい）春秋（しゅんじゅう）』は初めてだったので、あんまり細分（さいぶん）化（か）されるようならある程度（ていど）まとめるし、そうでもないなら分けようと中身（なかみ）を確認（かくにん）している中、ふと気付いた事があった。ページ番号が書（か）いていないページがけっこう多（おお）い。これはばらした時に管理（かんり）を気をつけないと順番（じゅんばん）がわからなくなる。また、記事（きじ）別分類（ぶんるい）をするとあとで再構成（こうせい）ができない可能性（かのうせい）もある。その辺を慎重（しんちょう）に見極（きわ）めるべく、どの程度（ていど）書（か）いていないのか確認（かくにん）しようとしたところ、どうもページ数が合わないような気がしてきた。話をわかりやすくする為（ため）に後ろから順番（じゅんばん）に書く。

　記載（きさい）してあるのは𝟓𝟐𝟖ページまで。さらに後ろに振込（ふりこみ）用紙（ようし）が𝟏枚と、裏表紙（うらびょうし）があるので、それも含めれば全部（ぜんぶ）で𝟓𝟑𝟐ページという事になる。

　𝟒𝟗𝟔ページと𝟒𝟗𝟕ページの間に𝟐𝟎ページの広告（こうこく）がある。どうも広告（こうこく）はページ数に加算しないらしい。

　𝟒𝟗𝟔ページ〜𝟐𝟓𝟕ページは問題（もんだい）なし。その次に広告（こうこく）が𝟏𝟔ページある。そのあとはなぜか𝟐𝟑𝟔ページと書（か）いてある。あれ？広告（こうこく）はページ数に入れないんじゃないの？しかも𝟏𝟔ページだと𝟐𝟓𝟐ページまでしか到達（とうたつ）しない。𝟐枚𝟒ページ分足りない。。。

　𝟐𝟑𝟔ページから𝟐𝟎𝟓ページは問題（もんだい）なし。広告（こうこく）が𝟔ページあるが、その次は𝟐𝟎𝟒ページなので加算しないらしい。𝟐𝟎𝟒ページ～𝟏𝟒𝟏ページまでは一まとまり。ただし、𝟏𝟖𝟎〜𝟏𝟖𝟏ページは広告（こうこく）で、これはページ番号が入（はい）っている。

　広告（こうこく）が𝟐ページある。𝟏𝟒𝟎ページ〜𝟏𝟎𝟗ページは問題（もんだい）なし。広告（こうこく）が𝟐ページある。𝟏𝟎𝟖ページ〜𝟕𝟕ページは問題（もんだい）なし。ページ番号が書（か）いてあるのはここまで。

　んじゃ残りは𝟕𝟔ページか……というと、なんと𝟏𝟏𝟓ページもある。表紙（ひょうし）と目次を抜いても𝟏𝟎𝟖ページ。広告（こうこく）は入（はい）っている。広告（こうこく）は抜いてかぞえるのだろう。

　広告（こうこく）を抜いてかぞえると今度（こんど）は𝟓𝟑ページしか無（な）い。ん？提供（ていきょう）元が明示（めいじ）された広告（こうこく）ではあるが、中に知られた作家（さっか）の写真（しゃしん）や文章（ぶんしょう）を伴った提灯（ちょうちん）記事（きじ）もある。文章（ぶんしょう）にはかわりないのでこれもページとかぞえるのだろうか？……と含めてかぞえても𝟏ページ足りない。

　そんな訳で、何度（なんど）計算（けいさん）してもいっこうに数が合わない。中身（なかみ）の文章（ぶんしょう）を読むよりページを数える方が頭を使（つか）うとは思わなかった。芥川賞（あくたがわしょう）作品（さくひん）よりもはるかに難解（なんかい）な『文芸（ぶんげい）春秋（しゅんじゅう）』は脳トレ機能（きのう）も持っていたのか……恐るべし。

　何にせよ、分割（ぶんかつ）保存（ほぞん）するにはページ番号が必要（ひつよう）なので、仮法則（ほうそく）を設定（せってい）しないといけない。本文とは別のページ番号が存在（そんざい）する物は慣れているが、足りない場合（ばあい）は初めてなのでまだアイデアが無（な）い。これから考（かんが）える。