2018年02月07日

多様性と境界②

 北陸地方で豪雪になっているが、車𝟏𝟎𝟎𝟎台以上が立ち往生することになり、現在もまだ多数が動けない状態という国道𝟖号線、石川県との境にある福井県あわら市で牛ノ谷という地名が出ていた。

 以前「多様性と境界」で、「谷」を[ヤ]と読むのか[たに]と読むのかの境に関して、本州南岸は愛知県の尾張と三河だが、北岸は北陸辺りなものの細かい場所までは確認していないと書いている。その件で、読み方を確認してみたところ、牛ノ谷は[うしのや]だった。近畿地方と接する福井県だが、この辺はもう[ヤ]派なのかと県全域を一覧したところ、牛ノ谷が例外で、全体的には[たに]派だった。ということで、福井県で「谷」が出たら[たに | だに]と読んでおくと、合っている確率が高い。例外は以下の通り。「甼」に関してはいつも通りで、右の語注参照のこと。

福井県
 嶺北部
  奥越域
   勝山市
    やとぐち 鹿谷甼矢戸口
    とちがみや 村岡甼栃神谷
    やくしがみや 野向甼薬師神谷
  北域
   あわら市
    うしのや 牛ノ谷
   福井市
    かごやちょう 篭谷甼
    すがや 菅谷
    すがやちょう 菅谷甼
   丹生郡越前甼
    かなや 金谷
  南域
   越前市
    ゆやちょう 湯谷甼
 嶺南部
  南西域
   小浜市
    やたべ 谷田部
    よつやちょう 四谷甼


 北の方に行くと[ヤ]が増えているので、石川県が境だろうか?とついでに確認してみたが、石川県も原則[たに]例外[ヤ]な地域だった。面白いのは、福井県の方が「谷」のつく地名が石川県の倍近くあるということ。それだけ地形の違いが表れているということなのかも知れない。

石川県
 加賀部
  北域
   河北郡津幡町
    やち 谷内
   金沢市
    かみやちまち 神谷内町
    いたがやまち 板ヶ谷町
  南域
   加賀市
    おくのやまち 奥谷町
    かみやだい 山中温泉加美谷台
    ひのやまち 日谷町
 能登部
  北域
   輪島市
    とくなりやち 町野町徳成谷内
    なかやち 門前町中谷内
  南域
   羽咋郡
    志賀町
     やちかみ 谷神
    宝達志水甼
     おぎのやち 荻谷
   七尾市
     にしやち 中島町西谷内
     やち 中島町谷内

 加賀部
  北域
   金沢市
    みなみせんごくまち 南千谷町
  南域
   加賀市
    はせだまち 山中温泉長谷田町


 [ヤ]派の中でも[ヤチ]が多く、徐々に東日本らしさが出てきている。富山県・岐阜県は今回調べていない。またそのうち。

 話題にしたついでだが、地名ではなく苗字に関して、西日本でありながら谷を[ヤ]と読む例外が以前苗字の番組で紹介されていた。いつも「苗字の番組」と書いているが、いい加減名前おぼえた方がいいな・・・「日本人のおなまえっ!」らしい。

 番組によれば、畿内いずみのくに
和泉国
にあった佐野村、現在の大阪府南部泉州域泉佐野市には、谷と書いて[ヤ]と読む苗字が多数存在しているとのことだった。これは地形と関係なく、屋号として使われる「○○屋」の「屋」を「谷」に変えたものらしい。もともと耕󠄃作に向かない土地で、荒れ野を整備するためにさまざまな職人が集まり、また岸和田城とその城下町からも比較的近いということで商人・職人の町として発展、結果、職業・取り扱い商品・地元や取引先の地名などを冠した屋号が林立したとのこと。ところが、明治以降になって苗字を登録するさい、地元の白道山上善寺の和尚が、いかにも屋号らしいからと「谷」を勧めて変化したそうな。その住職の苗字も谷だった。かつて𝟏𝟕𝟎𝟎戸中𝟒割が屋号系苗字だったとのことで、最大𝟔𝟖𝟎種はあったことになるが、番組に出て来た屋号や苗字だけでも

ばんじょうや  番匠谷
くまとりや 熊取谷
やすまつや 安松谷
さぬきや 讃岐谷
きしわだや 岸和田谷
かいづかや 貝塚谷
しんげや 新家谷
はりまや 播摩谷
あわじや 淡路谷
ひねのや 日根野谷
なべや 鍋屋
いずみや 泉屋
とばや 鳥羽屋
たにがわや 谷川屋
やまとや 大和屋
やまがや 山家屋
かぶや? 下部屋
ふるでや? 古手屋
もめんや 毛綿屋
おおきや 大木屋
はしもとや 𫞏本屋
すぎや? 杦屋
いちばや 市場屋
ながたきや 長瀧屋
うおや 魚谷
こめや 米谷
さかや 酒谷
しおや 塩谷
おけや 桶谷
なべや 鍋谷
こまものや 小間物谷
かじや 鍜冶谷
だいくや 大工谷
さしものや 指物谷
かなものや 金物谷
もめんや 木綿谷
かわらや 瓦谷
くしや 櫛谷
おけや 桶谷
ほしかや 干鰯谷


 熊取・岸和田・貝塚・新家・日根野・長瀧は泉佐野の近くの地元地名。

 このうちいくつかは現役苗字にこだわった自称実用全苗字一覧に出てこなかったので、既に廃絶しているのかも知れない。また、泉佐野との関係は不明だが屋号系と思われる苗字が「○○屋」のまま今も使われているようだ。

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posted by Marimó Castellanouveau-Tabasco at 23:01| 情報処理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする