2018年01月18日

表記アタック

 前回話題にした、『病名くん𝟐․𝟎』登録傷病名のほとんどが𝐁音との件で、例外として𝐕音が出て来る名前を列挙したが、エバンス症候群が抜けていたのであとで追加しておく。エヴァンス症候群﹦エヷンス症候群。

 この[va]を「ヷ」で表記する方法、試してみると面白い発見もあった。英語では𝐕の文字を[v | f]と発音するが、ドイツ語では[f]になる。代わりに𝐖で[v]を表す。どういう経緯でそうなったのか詳しい歴史は知らないが、この手の違いはヨーロッパの場合たいてい、時代とともに音が変わったか、当てる文字が当初から違ったかのどちらか。英語で𝐕は[v]だが、もともと𝐕は𝐔と同根で、ラテン語では[u | v]だった。𝟏𝟎年くらい前にどこかの英語の解説記事で間違えていたのを目にしたことがあるが、𝐕を[u]と発音するのは大文󠄁字の話。ブルガリというブランド名があるが、𝐁𝐕𝐋𝐆𝐀𝐑𝐈と書いて[bulgari]と発音するのはその古い表記法を採用したもの。社員が普段どう書いているのかは知らないが、小文字で書くのなら𝐁𝐮𝐥𝐠𝐚𝐫𝐢でかまわない。この場合は商号か商標になっている可能性が高いので小文字でもあえて𝐛𝐯𝐥𝐠𝐚𝐫𝐢と書く可能性はあるかも知れないが、仮にそうだったとしても特殊なケースになる。ヨーロッパやアメリカの古い建築物の入口にかかれた文字では今でも𝐕で[u]を表していることがあるのでちょっと気にかけてみると風景の見方もまた変わってくると思う。こんなのはコタツに入って寝っ転がりながらでも𝐓𝐕を通して発見することができる。現地に行っても気づかない人は気づかない。「行こうが行くまいが、解かる人には解かるし、解らない人には解らない」の一例だろう。

 ドイツ語に話を戻すが、𝐖は[v]と発音するのが普通なので、オーストリアの首都ウィーン𝐖𝐢𝐞𝐧などは本来ヴィーンと発音するべきなんじゃないかと思うが、なぜか日本ではウィーンと発音する。英語ではヴィエナ𝐕𝐢𝐞𝐧𝐧𝐚なので英語読みではない。日本では人名や地名をなるべく現地語に近づけて表記するという良い習慣がある。英語で書いた方がいいと思う人もいるかもしれないが、多様性という観点から言えば、英語に偏るのはよくない。それでなくても外国と接する機会は少ない地理的環境なので。しかし、それが英語ではないが何語なのかを教えてやれる教師や大人が決して多くないのは残念。こんなちょっとした表記からでも世界に目を向ける機会はあって、園児・児童でもなんとなく世界にはたくさんの言語があることを感じることができるのに。しかも、ドイツ語の場合、なぜか𝐖だけは[w]で読む習慣があるように思う。理由は知らないが、昔は[w]と発音する地域があったのか、日本人には[v]の音が難しくて[w]になったのかといったところだと思うが。

 そんなわけで、日本で知られるドイツの地名や人名、ドイツ語由来の外来語では𝐖が[w]になることから、作曲家の𝐖𝐚𝐠𝐧𝐞𝐫はワーグナーと呼ばれている。普通にドイツ語読みすればヴァーグナー。ヨーロッパのクラシック音楽が関連した何かの話でたまにヴァーグナーと書く人もいて、中学・高校の頃はちょっとした混乱があった。最初は誤記だと思ったが、複数回みかけると単なる誤記でもなさそうだとなってくるも、身のまわりでドイツ語について聞ける人がいなかったのでずっと不明だった。

 その後ドイツの𝐙𝐃𝐅のニュースでワーグナーの話題をしていたことがあって、耳をこらして聞いてみたら、まちがいなく[v]で発音していたので、[v]が正解なんだなと思うようになったが、この和風ドイツ語発音はなかなか紛らわしい。個人的には今ではもちろんヷーグナーと書く。実は「ワーグナー」という表記になれると「ヴァーグナー」に替えたときの違和感がけっこう大きかったのだが、「ヷーグナー」にすると、慣れた見た目に戻って、しかも[v]をしっかりアピール出来ているなと感じた。それだけでなく、日本人が苦手な[v]の発音、日本語のワ[wa]を言うつもりで濁らせようとすると、[v]が出しやすいことにも気づいた。これは[ve]の発音でも言える。「ベ[be]」を[v]っぽく発音しようとするより、ウェ[we]を濁らせようと考える方が[ve]が出しやすい。

 そもそも有声音・無声音の考え方で言えば、𝐁[b]に対応するのは𝐏[p]であって、𝐕はあまり関係ない。𝐕[v]と対応するのは𝐅[f]になる。英語でも𝐤𝐧𝐢𝐟𝐞の複数形が𝐤𝐧𝐢𝐯𝐞𝐬になったり、𝐒𝐭𝐞𝐩𝐡𝐞𝐧が𝐒𝐭𝐞𝐯𝐞𝐧と書かれたりもする。日本語ではバ行に𝐁と𝐕が集約されてしまったために、ややこしくなって[v]がよけいに難しく感じられているように思う。学校教育で𝐕[v]を扱うときは、あまり𝐁[b]との対比で教えない方がいいと思う。

 ヨーロッパでもラテン系はあまり[v]の音がはっきりしない。スペイン語では𝐕とつづっても[b]と発音したりする。なので無関係とも言い切れないが、よけいなことは考えないほうがいいだろう。
posted by Marimó Castellanouveau-Tabasco at 23:59| 情報処理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする