2017年07月23日

論理的に物を考える力とプレゼンの力と議論する力を鍛える

 ちまたでは学校やビジネスでの人材教育・コミュニケーションをテーマにした話で、「論理的に物を考える力」とか「プレゼンテーション能力」とか「議論・討論をする」といった内容が偶に紹介されているが、キーワードや表題を付けて縦割りに考えたりわざわざお金払って塾やらセミナーやらに通わなくても、日常の中で学べることはたくさんある。別にそういう話をするつもりは無かったのだが、「人の話を聴く力」の延長で偏差値について触れようと思い、その準備をしていた時にこの手の情報処理をまとめて扱う話が出て来たので、先にそれについて触れようと思う。

 最近でこそネットで気軽に調べられる『大辞林』や『ウィキペディア』やその他の解説サイトも多用され、出典としても権威を持ち始めているが、以前は言葉の意味を紹介する際の権威の代表は『広辞苑』だった。しかし我が家では以前から『広辞苑』の評判がよろしくない。理由は、「『広辞苑』を引くとかえって分からなくなる」「『広辞苑』の書いていることを理解するためにもう一冊辞書が必要になる」「『広辞苑』で、ある項目を調べると、説明を理解するためにまた別の項目を引かないといけない」といったもの。要するに1回で用が済まない時がしばしばある。今回、「偏差値」について話題にするために、まずは一般的な言葉の意味からと説明を借りるため『広辞苑』第六版を引いたらこうあった。

へんさち【偏差値】検査結果が集団の平均からどの程度ずれているかを示す数値。点数の分布が正規分布に従うとみて、偏差を標準偏差で割り一〇倍し、五〇を加算した数値。

 第一文はいい。問題は第二文。悪いがこれでは一般向けの説明としては使えない。この説明で「なるほどね」と理解できるのなら既に偏差値の意味をある程度知っている人じゃないかと思うくらい。この第二文を付け加えることでかえって混乱を招く。第一文だけで済ませた方が無用な混乱は防げるだろう。

 簡潔さは確かにある。それなりの水準の試験であればこの回答で点数はもらえるだろう。しかし、プレゼン力の試験なら、専門家か、ある程度統計の知識のある集団相手でない限りは0点がついても不思議ではない。

 私は小学生の頃、言葉の意味を説明する際は、説明対象となる言葉を含む表現を使ってはいけないことを教えられた記憶がある。そして、人に説明する際は、みんなが分かる言葉で話すようにも指導された記憶がある。しかし中学以降大人になるにつれて、「みんな」の想定があまりにも広くてそんなに簡短にはいかないとも思うようになった。上には上がいるし、下には下がいるのが現実。そして平易な言葉を使うとかえって説得力を感じない人もいると感じた。これは情報処理としてはむしろ問題ではあるが。本質的に同じであればどういう言い方をしようが中身は変わらない。ならば難しくして分からない人が出る問題が生じても、誤解なく簡短に出来る場合であれば簡短にすることで困る人はいないはず。にも関らず語彙の難易度で感情的なゆらぎを持ったり、同じ内容を専門用語に言い換えただけで満足を感じるのは、情報処理力に問題があると言える。しかしこれは素人でも専門家でもみられる。

 それはそうと、第二文は「偏差値」の説明なのに「偏差」という言葉が出て来る。そして「偏差」に対する説明は無い。こういうのはやってはいけない。そして「正規分布」「偏差」「標準偏差」といった一般的でない語が並ぶ。これでは自己満足な説明に過ぎない。「正規分布って何?」「偏差って何?」「標準偏差って何?」となって、今度はそれを調べないといけない。

 同時に、偏差値の説明を読んで上記のような説明に出くわした際、「正規分布って何?」「偏差って何?」「標準偏差って何?」と疑問に感じることも重要ではある。よく分からないけど辞書にそう書いてあるのだから、専門家がそう言ってるのだからと、そのまま受け売りして喋っても時間稼ぎにしかならない。この時、「正規分布」「偏差」「標準偏差」について更に調べてみる・考えてみることが、論理的に物を考える力を養うことになる。そして、プレゼンや議論をする際にも役に立つ。自分が分からないということは他の人も分からない可能性が出てくるのだから。そして自分が分らなかった・調べたという経験が幾つも貯まってくると、自分には分󠄃っていてもこの部分は分からない人が出てくるだろうなと他者の視点でどう感じるかの勘も働くようになるし、他者がどう考えてくる・どう展開していくかの推測もできるようになるし、それが貯まって複数の視点が瞬時に思い浮かぶようにもなる。ある情報に接した時の選択肢が増えて、未経験の人・経験の少ない人と差がつく。これは仕事の効率化にもなる。あとで生じる手間を先に想定して先鞭をつけておくのだから。

 常に目先の正解に合致することだけを訓練してきた人や、目先の正解を得てきた経験が報酬系と結びついてしまった人は、この力が驚くほど低い。他の選択肢が想像できない、分からない人の視点に立てない、理解はしているがあえて突っ込んで調べている人や先にあるものを想定して動いてる人の感覚が理解できない……と悪循環を起こしたりもする。障碍や深層心理と結びつけた分析をすることで自分を納得させようとするジョージの分析を始める者も出る。これでは幾ら試験の点数が高くても成長性が高いとは言えない。

 ただ、この一連の作業に向かない素養を持っている人もいるかも知れないとは感じる。今すぐ頭に思い浮かぶのは3つのタイプ。1つは、主題から外れて帰って来れなくなるタイプ。元々は「偏差値」の意味を探ることであった。なので主題はあくまで偏差値である。正規分布が何かを調べてそこから数式の意味を考えてそこに出てくる記号の由来を調べて……としまいには偏差値とは何の関係も無い話になり、しかもそれらが気になって仕方無く、偏差値の話に戻れない人。

 2つ目は、一度に複数の話を並べると頭が混乱してしまう人。「偏差値」があり、その偏差値に附随して「正規分布」「偏差」「標準偏差」が出て来た時点で思考停止に陥ったり、正規分布の説明と偏差値の説明とが融合してしまい、100で割った50で足したの話に平方根が出来たり、どの程度ずれているかの話なのにグラフを作る話と理解していたりするようなもの。階層関係を理解できない。野菜と大根とリンゴと果物と植物とカボチャとバナナを全部同じ次元で扱って植物-野菜と果物-リンゴとバナナ-大根とカボチャといった関係が分からなくなってしまうようなもの。

 3つ目は逆に、関連を拒絶するタイプ。「それとこれとは話が違う」と言って、あくまで偏差値の話から離れようとしない。偏差値の説明を理解するために正規分布を考える。そのために正規分布の説明を確認する……それが何の役に立つのか理解できない人。

 以上の3つは似た方向性ではある。他にもまだタイプはあるかも知れない。何らかの研究が存在するなら現在どの程度のことが分かっているのか興味深いが、もし手付かずなら、興味のある人は研究してみたらいいと思う。

 1つのテーマから掘り下げて複数の話に広げていくことが最初は難しくても、慣れることで理解したり混乱なく扱えるようになっていく人は問題ない。しかしどうやっても根本的に理解ができない・心理的に許容できない人は問題になる。以前話題にしたように、教育論を考える時は①「放っておいてもやる・できる層」、②「機会を与えればやる・できるようになるが、機会を与えなければやらない・できるようにならない層」、③「どうやってもやらない・できない層」の3つを考えないとどこかしらに不幸が出る。③にとって深堀りすることは負担が大きい。だからといって、①の層の成長を阻害したり、②の層を後天的な③に落として良い理由にもならない。この場合の③は見た目に成績がよくても生じる特性なので判断は難しいだろう。年齢によっても変わってくるはず。いずれにせよ、経験に乏しければ①②であっても大人になってからだと難しいことだし、また時間的余裕が無いことが問題になってしまう。なので小学生の頃から経験しておいて損は無い。こんなことは別に塾に行く必要も無い。学校でも家でもできる。簡短なことでもいいから継続的にやるだけ。同時に語彙力もつく。この語彙力は丸暗記の語彙力と違って機会を伴っているので定着はしやすい。

 そういうわけで、いつものごとく説明になってない言葉について調べてみた。

せいきぶんぷ【正規分布】確率変数の分布曲線が正規曲線であるような分布。ガウス分布。

 これが『広辞苑』である。今度は「確率変数って何?」「分布曲線って何?」「正規曲線って何?」となってしまう。分布曲線は分布が曲線状になっているのだろうと想像はつく。正規曲線は正規の曲線だから少なくとも例外的なものではないのだろうとなる。ここで「偏差値」に関連して1つのグラフが出て来ることがあるのを知っている・思い出せる人なら、ある程度察しはつくんじゃないかと思う。こういうのも普段からの積み重ねで、偏差値の数字ばかり気にして偏差値のグラフや説明を読んでいない・聴いていない人は出遅れることになる。塾によっては成績表や解答・解説集に偏差値のグラフが表示されて自分がどの位置なのかが示されているのではないかと思う。何気なく目にしていたものが何だったのかもここで少し分󠄃かってくることになる。

 何はともあれ、とりあえず「確率変数」を調べてみる。

かくりつへんすう【確率変数】標本空間Sを定義域とする関数Xのこと。普通、Xの値である従属変数と関数記号を同じ文字で表す。SをXの値で示すことが多い。連続的に変化する確率変数を連続的、そうでないときを離散的という。

 今度は「標本空間」「定義域」「関数」「従属変数」といった見慣れない言葉が出て来る。小学生で今回の偏差値というテーマに疑問を持ったらちょっと厳しいかなとは感じる。中学以降なら「関数」は想像がつくだろう。「従属変数」の言葉は習ったか否か憶えていないが、変数𝒙のことなので抜いても構わない。「標本空間」「定義域」は堅苦しい言い方をしているが、対象となってるデータ、学力偏差値で話題になる場合は受験者の成績。受験者の成績の範囲で考える関数。一応引いてみると、

ひょうほんくうかん【標本空間】一つの試行について結果の見方を定めるとき、結果の全体をその試行の標本空間という。標本空間の要素を標本点・標本値という。

 全体の成績とか得点とか自分の馴染みの言葉に言い換えてしまえば良い。そして改めて正規分布の説明に出てきた言葉に戻る。

せいききょくせん【正規曲線】任意の実数𝒎と正の数𝛔に対し、次の性質をもつような曲線。直線𝒙﹦𝒎に関し対称、頂点の座標﹙𝒎﹐𝟏∕√﹙𝟐𝛑﹚𝛔﹚、𝒙が増加するとき時𝒙﹦𝒎−𝛔において下に凸から上に凸に変る、𝒙が大きくなると𝒙軸に近づく、𝒙軸との間の面積は𝟏。式は𝒇₍𝒙₎﹦﹙𝟏∕𝟔√﹙𝟐𝛑﹚﹚𝐞𝒙𝐩﹛−﹙𝒙−𝒎﹚²∕𝟐𝛔²﹜ガウス分布

 理解できる人はそれで構わない。しかし、数学や統計の本ではなく国語辞典のような一般的なもので調べている人なら大半はこれが何なのか分からないんじゃないかと思う。分かろうともせず辞書を閉じる人も少なくなかろう。一応数式拔きに日本語の問題として考えれば、5つの性質を持つ曲線だということが分かる。言葉としては「実数」「正の数」「対称」「座標」「𝒙軸」といったものが出て来て、小学生以下なら更に調べる必要も出てくるかもしれないが、中学以降では数学の基礎的な単語で、これ以上調べてもしょうがないというのが分かる。曖昧であればここで確認しておけばいい。試験や授業や問題と関係ないこういうところでも学び記憶を定着させるきっかけにできる。結局正規分布曲線が何なのか分からないままになってもこれらの説明だけではしょうがないが、簡短に書けばこういうもの。

正規分布曲線.jpg

 だいぶ離れたので再掲しよう。

へんさち【偏差値】検査結果が集団の平均からどの程度ずれているかを示す数値。点数の分布が正規分布に従うとみて、偏差を標準偏差で割り一〇倍し、五〇を加算した数値。

 焦点はあくまでこれ。今は「正規分布」について話題にした。次は「偏差」と「標準偏差」に触れる。

へんさ【偏差】一定の標準となる数値・位置・方向などから、かたよりずれること、その度合。また、平均値からのかたより。偏倚(へんい)
ひょうじゅんへんさ【標準偏差】分散の正の平方根のこと。

 また分からないことを書く(笑) 「分散って何?」となる。「何?」のあとに「💢」とか「(怒)」を付けても良いかも知れない。

ぶんさん【分散】④[数](variance) 偏差(統計値と平均値との違い)を自乗し、それを算術平均したもの。これを開平すれば標準偏差が得られる。

 分散には幾つか意味があるので関係するものだけを引っ張った。偏差の意味もここで書かれている。辞書を引くと想定外に別のものも引っ掛かる。これによって幅が広がることもある。逆算至上主義では想定できない「犬も歩けば棒に当たる」の一パターン。

 「棚からぼた餅」という言葉もあるが、「分散」の説明に「偏差」の意味が書いてある。しかも簡潔で分かりやすい。それでも「自乗」「算術平均」「開平」が引っ掛かる。

じじょう【自乗・二乗】[数]同一の数(文字・式)二つを掛け合わせること。
さんじゅつへいきん【算術平均】相加平均に同じ。

 相加平均・相乗平均というのは中高の数学で出て来たと思うが、

そうかへいきん【相加平均】𝒏個の数を加えた和を𝒏で除して得る平均値。算術平均

 要するに普通の平均。開平という言葉はひょっとしたら数学で習ったかも知れないが、私は記憶が無い。

かいへい【開平】ある数または代数式の平方根を求めること。

 要するに「標準偏差」は「平均値からのかたより度合いを2乗した数字をいくつも足して平均を出した数字にルートつけて割り出した数値」。

 そして最後にもう一段話を戻して

へんさち【偏差値】検査結果が集団の平均からどの程度ずれているかを示す数値。点数の分布が正規分布に従うとみて、偏差を標準偏差で割り一〇倍し、五〇を加算した数値。

について考えると、偏差値とは「平均値からのかたより度合い」÷「(平均値からのかたより度合い)²を幾つも足して平均を出した数字にルートつけて計算したもの」×10+50。それをしてどうするの?というと、「検査結果が集団の平均からどの程度ずれているか」を調べる。「平均値からのかたより度合い」、分かりやすく言えば「アイツ、普通じゃないよね」の普通じゃない度合い。「ヘンタイ度」とでも言おうか。「偏差値が高い」というのはそれだけ「普通じゃない」、「ヘンタイ度が高い」とも言える。

 ここまで来てようやく偏差値の話ができるだけの準備が整った。今回元々書こうと思っていた話はここからだったのだが、辞書1回引いたことでこれだけ長引いた。しかしこれだけ話が展開して新しい言葉も出てきたわけで、もしこれが調べた人にとって知らない言葉ばかりだった場合はそれだけ語彙や視点が増えることになる。実はプレゼン用の資料やレポート・論文を作る際、実際に使用はしなくても下準備として最低でもこの程度のことは他人に言われず自分でツッコミを入れて探っておくことが情報処理としては重要になってくる。最初にも書いたように、こういった準備の積み重ねが幅の広さ・深みとなって蓄積されて、あとになって一気につながり始めると、目先の暗記や受け売りで済ませた人には超えられない壁になるので。

 以前「曖昧な情報~暗記、共感、進学校~」で「中3からは『無理をしない』、高校の段階で受験勉強は捨てて『てきとーに』というスタンスを取っていた」と書いたが、試験で点数を取るために無理な暗記はしなかったものの、こういった意味の把握の仕方と掘り下げは日常的に行っていた。学校に関係なくその時疑問に思ったことでもそうだし、明日試験という時に試験勉強しながらでも必要を感じたら試験勉強無視で。なので受験が終わったあとでも忘れにくい。そして受験とは関係の無い場面・機会・話題にでも無理なく使える。元々試験を意識しない把握の仕方をしているので当然とも言える。定期試験や受験をその話題に触れる「機会」として利用したに過ぎない。

 次回、本題に入る。
posted by Marimó Castellanouveau-Tabasco at 15:05| 情報処理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする