ゑいのためとしてゐをするとなしたり⑩

　前線（ぜんせん）が南下（なんか）して東北（とうほく）では大雨（おおあめ）、昨日（きのう）は関東（かんとう）にも下（お）りてきていたが、この時期（じき）の前線（ぜんせん）南下（なんか）は何年（なんねん）か前（まえ）にもあったかと思（おも）う。

　既（すで）に梅雨（つゆ）明（あ）けはしている。なので梅雨前線（ばいうぜんせん）ではない。となると次（つぎ）は秋雨（あきさめ）前線（ぜんせん）になるはずだが、立秋（りっしゅう）を過（す）ぎているわけでもないのに秋雨（あきさめ）なのだろうか？となる。結局（けっきょく）ただの「前線（ぜんせん）」と呼ばれていた。今年（ことし）もノーマル前線（ぜんせん）なのかな？と思（おも）ったら、どうもそのよう。立秋（りっしゅう）はいつだろう？と確認（かくにん）したら今日（きょう）だった。しかしせっかくのフライング秋雨（あきさめ）前線（ぜんせん）も、台風（たいふう）𝟏𝟖𝟏𝟑号珊珊（サンサン）のお陰（かげ）でおじゃんになる模様（もよう）。来週（らいしゅう）以降（いこう）は関東（かんとう）もまた酷暑（こくしょ）らしい。

　台風（たいふう）の勢力（せいりょく）はそれほど強（つよ）くないが、方向（ほうこう）転換時（てんかんじ）に速度（そくど）が落（お）ちて関東（かんとう）の太平洋（たいへいよう）側は雨雲（あまぐも）がかかるとの事（こと）。北（きた）の空気（くうき）を引（ひ）っ張（ぱ）り込（こ）むので多少（たしょう）は涼（すず）しくなるはず……と思（おも）ったら今日（きょう）既（すで）に関東（かんとう）では涼（すず）しくなった。なので猛暑（もうしょ）のニュースはしない。特（とく）に全国（ぜんこく）ニュースは露骨（ろこつ）に差別（さべつ）してくるが、危険（きけん）な暑（あつ）さと散々（さんざん）大事（おおごと）にしておきながら、首都圏（しゅとけん）で涼（すず）しいと他（ほか）が暑（あつ）くても扱（あつか）いは無（な）いか軽（かる）くなる。毎年（まいとし）恒例（こうれい）。

　ところで、年末（ねんまつ）に京都（きょうと）の清水寺（きよみずでら）を借（か）りて発表（はっぴょう）される「今年（ことし）の漢字（かんじ）」は恐（おそ）らく常用（じょうよう）漢字（かんじ）に限定（げんてい）されているとは思（おも）う。今（いま）の印象（いんしょう）が今年（ことし）最後（さいご）の大事（おおごと）なら「暑」とか「熱」が選（えら）ばれるかも知（し）れない。しかし、もし制限（せいげん）が無（な）いなら「暍」という漢字（かんじ）も悪（わる）くない。あくまで𝟕月（しちがつ）；𝟖月（はちがつ）の印象（いんしょう）だけで言（い）えばの話（はなし）だが。

　「熱中症（ねっしゅうしょう）」という言葉（ことば）が一般（いっぱん）化（か）したのは割（わり）と新（あたら）しく、私（わたし）が小学生（しょうがくせい）のころ最初（さいしょ）にこの手（て）の単語（たんご）でおぼえたのは日射病（にっしゃびょう）とか熱射病（ねっしゃびょう）。最近（さいきん）はとんと耳（みみ）にしなくなったが、今（いま）でも言葉（ことば）自体（じたい）は残（のこ）っているようで、𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎−𝟐𝟎𝟏𝟑では

熱及（およ）び光線（こうせん）の作用（さよう）	熱射病（ねっしゃびょう）及（およ）び日射病（にっしゃびょう）𝐇𝐞𝐚𝐭𝐬𝐭𝐫𝐨𝐤𝐞（ヒートストロウク） 𝐚𝐧𝐝（エンドゥ） 𝐬𝐮𝐧𝐬𝐭𝐨𝐫𝐤𝐞（サンストゥロウク）	熱射病（ねっしゃびょう）
	熱性（ねつせい）失神（しっしん）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐬𝐲𝐧𝐜𝐨𝐩𝐞（スィンカピー）	熱性（ねつせい）虚脱（きょだつ）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐜𝐨𝐥𝐥𝐚𝐩𝐬𝐞（カレプス）
		熱性（ねつせい）失神（しっしん）
	熱性（ねつせい）痙攣（けいれん）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐜𝐫𝐚𝐦𝐩（クレンプ）	熱痙攣（ねつけいれん）
	日射病（にっしゃびょう），無汗性（むかんせい）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐞𝐱𝐡𝐚𝐮𝐬𝐭𝐢𝐨𝐧（イグゾースチャン）﹐ 𝐚𝐧𝐡𝐲𝐝𝐫𝐨𝐭𝐢𝐜（アンハイドゥラティック）	無汗性（むかんせい）日射病（にっしゃびょう）水分（すいぶん）喪失（そうしつ）による熱疲労（ねつひろう）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐩𝐫𝐨𝐬𝐭𝐫𝐚𝐭𝐢𝐨𝐧（プラストゥレイシャン） 𝐝𝐮𝐞（デュー） 𝐭𝐨（トゥ） 𝐰𝐚𝐭𝐞𝐫（ウォーター） 𝐝𝐞𝐩𝐥𝐞𝐭𝐢𝐨𝐧（ディプリーシャン）
	塩分（えんぶん）喪失（そうしつ）による日射病（にっしゃびょう）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐞𝐱𝐡𝐚𝐮𝐬𝐭𝐢𝐨𝐧（イグゾースチャン） 𝐝𝐮𝐞（デュー） 𝐭𝐨（トゥ） 𝐬𝐚𝐥𝐭（ソールト） 𝐝𝐞𝐩𝐥𝐞𝐭𝐢𝐨𝐧（ディプリーシャン）	塩分（えんぶん）﹙及（およ）び水分（すいぶん）﹚喪失（そうしつ）による日射病（にっしゃびょう）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐩𝐫𝐨𝐬𝐭𝐫𝐚𝐭𝐢𝐨𝐧（プラストゥレイシャン） 𝐝𝐮𝐞（デュー） 𝐭𝐨（トゥ） 𝐬𝐚𝐥𝐭（ソールト） ﹙𝐚𝐧𝐝（エンドゥ） 𝐰𝐚𝐭𝐞𝐫（ウォーター）﹚ 𝐝𝐞𝐩𝐥𝐞𝐭𝐢𝐨𝐧（ディプリーシャン）
	日射病（にっしゃびょう），詳細（しょうさい）不明（ふめい）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐞𝐱𝐡𝐚𝐮𝐬𝐭𝐢𝐨𝐧（イグゾースチャン）﹐ 𝐮𝐧𝐬𝐩𝐞𝐜𝐢𝐟𝐢𝐞𝐝（アンスペサファイドゥ）	日射病（にっしゃびょう）熱疲労（ねつひろう）ＮＯＳ𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐩𝐫𝐨𝐬𝐭𝐫𝐚𝐭𝐢𝐨𝐧（プラストゥレイシャン） 𝐍𝐎𝐒（ｴﾇ･ｵｳ･ｴｽ）
	熱疲労（ねつひろう），一過性（いっかせい）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐟𝐚𝐭𝐢𝐠𝐮𝐞（ファティーグ）﹐𝐭𝐫𝐚𝐧𝐬𝐢𝐞𝐧𝐭（トゥレンシャント）	熱疲労（ねつひろう）
	熱性（ねつせい）浮腫（ふしゅ）	熱性（ねつせい）浮腫（ふしゅ）
	熱及（およ）び光線（こうせん）のその他（ほか）の作用（さよう）𝐎𝐭𝐡𝐞𝐫（アザー） 𝐞𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭𝐬（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ） 𝐚𝐧𝐝（エンドゥ） 𝐥𝐢𝐠𝐡𝐭（ライトゥ）	暑気（しょき）あたり；夏（なつ）痩（や）せ
		熱中（ねっちゅう）症（しょう）
	熱及（およ）び光線（こうせん）の作用（さよう），詳細（しょうさい）不明（ふめい）𝐄𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭（イフェクトゥ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ） 𝐚𝐧𝐝（エンドゥ） 𝐥𝐢𝐠𝐡𝐭（ライトゥ）﹐ 𝐮𝐧𝐬𝐩𝐞𝐜𝐢𝐟𝐢𝐞𝐝（アンスペサファイドゥ）

という構成（こうせい）になっている。右側（みぎがわ）に英語（えいご）表記（ひょうき）を付（ふ）した物（もの）は𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎−𝟐𝟎𝟏𝟔にもあるもの。英語（えいご）表記（ひょうき）が付いていない場合（ばあい）は日本（にほん）独自（どくじ）に置（お）いているもの。熱中症（ねっしゅうしょう）は世界（せかい）保健（ほけん）機関（きかん）では設定（せってい）していない日本（にほん）独自（どくじ）の概念（がいねん）とみられる。なお、和名（わめい）は𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎−𝟐𝟎𝟏𝟑準拠（じゅんきょ）の『病名（びょうめい）くん𝟐․𝟎』に拠（よ）った。

　ちなみに最新（さいしん）の𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟏−𝟐𝟎𝟏𝟖だとこうなっている。

𝟐𝟐 損傷（そんしょう），中毒（ちゅうどく）及（およ）びその他（ほか）の外因（がいいん）の影響（えいきょう）𝐈𝐧𝐣𝐮𝐫𝐲（インジャリー）﹐𝐩𝐨𝐢𝐬𝐨𝐧𝐢𝐧𝐠（ポイズニング） 𝐨𝐫（オア） 𝐜𝐞𝐫𝐭𝐚𝐢𝐧（サートゥン） 𝐨𝐭𝐡𝐞𝐫（アザー） 𝐜𝐨𝐧𝐬𝐞𝐪𝐮𝐞𝐧𝐜𝐞𝐬（カンスィクウェンスィズ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐞𝐱𝐭𝐞𝐫𝐧𝐚𝐥（エクスターンル） 𝐜𝐚𝐮𝐬𝐞𝐬（コーズィズ）

𝐍𝐅․ 外因（がいいん）のその他及（およ）び詳細（しょうさい）不明（ふめい）の作用（さよう）𝐎𝐭𝐡𝐞𝐫（アザー） 𝐨𝐫 𝐮𝐧𝐬𝐩𝐞𝐜𝐢𝐟𝐢𝐞𝐝（アンスペサファイドゥ） 𝐞𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭𝐬（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐞𝐱𝐭𝐞𝐫𝐧𝐚𝐥（エクスターンル） 𝐜𝐚𝐮𝐬𝐞𝐬（コーズィズ）

𝐍𝐅𝟎𝟏․ 熱の作用（さよう）𝐄𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭𝐬（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ）

𝐍𝐅𝟎𝟏․𝟎․ 熱射病（ねっしゃびょう）𝐇𝐞𝐚𝐭𝐬𝐭𝐫𝐨𝐤𝐞（ヒートストロウク）
𝐍𝐅𝟎𝟏․𝟏․ 熱虚脱（ねつきょだつ）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐬𝐲𝐧𝐜𝐨𝐩𝐞（スィンカピー）

熱失神（ねつしっしん）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐜𝐨𝐥𝐥𝐚𝐩𝐬𝐞（カレプス）も含（ふく）む

𝐍𝐅𝟎𝟏․𝟐․ 液体（えきたい）喪失（そうしつ）による熱疲労（ねつひろう）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐞𝐱𝐡𝐚𝐮𝐬𝐭𝐢𝐨𝐧（イグゾースチャン） 𝐝𝐮𝐞（デュー） 𝐭𝐨（トゥ） 𝐟𝐥𝐮𝐢𝐝（フルーイドゥ） 𝐝𝐞𝐩𝐥𝐞𝐭𝐢𝐨𝐧（ディプリーシャン）

水分（すいぶん）喪失（そうしつ）による熱疲労（ねつひろう）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐩𝐫𝐨𝐬𝐭𝐫𝐚𝐭𝐢𝐨𝐧（プラストゥレイシャン） 𝐝𝐮𝐞（デュー） 𝐭𝐨（トゥ） 𝐰𝐚𝐭𝐞𝐫（ウォーター） 𝐝𝐞𝐩𝐥𝐞𝐭𝐢𝐨𝐧（ディプリーシャン）も含（ふく）む

𝐍𝐅𝟎𝟏․𝟑․ 熱疲労（ねつひろう），一過性（いっかせい）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐟𝐚𝐭𝐢𝐠𝐮𝐞（ファティーグ）﹐ 𝐭𝐫𝐚𝐧𝐬𝐢𝐞𝐧𝐭（トゥレンシャント）
𝐍𝐅𝟎𝟏․𝐘․ その他（ほか）の明示（めいじ）された熱の作用（さよう）𝐎𝐭𝐡𝐞𝐫（アザー） 𝐬𝐩𝐞𝐜𝐢𝐟𝐢𝐞𝐝 𝐞𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭𝐬（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ）
𝐍𝐅𝟎𝟏․𝐙․ 熱の作用（さよう），詳細（しょうさい）不明（ふめい）𝐄𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ）﹐ 𝐮𝐧𝐬𝐩𝐞𝐜𝐢𝐟𝐢𝐞𝐝（アンスペサファイドゥ）

　和名（わめい）はまだ公表（こうひょう）されていないので私（わたし）が慣例（かんれい）を適用（てきよう）して付（ふ）しておいた。最新版（さいしんばん）では熱痙攣（ねつけいれん）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐜𝐫𝐚𝐦𝐩（クレンプ）𝐬や無汗性（むかんせい）日射病（にっしゃびょう）𝐚𝐧𝐡𝐲𝐝𝐫𝐨𝐭𝐢𝐜（アンハイドゥラティック） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ） 𝐞𝐱𝐡𝐚𝐮𝐬𝐭𝐢𝐨𝐧（イグゾースチャン）や熱性（ねつせい）浮腫（ふしゅ）𝐇𝐞𝐚𝐭 （ヒートゥ）𝐨𝐞𝐝𝐞𝐦𝐚（エデマ）が無（な）い。「熱中症（ねっしゅうしょう）」は恐（おそ）らく𝐍𝐅𝟎𝟏․𝐘に拈（ね）じ込（こ）むのではないかと思（おも）う。

　話（はなし）を漢字（かんじ）に戻（もど）すが、「暍」という漢字（かんじ）は昨日（きのう）別（べつ）の用事（ようじ）で辞書（じしょ）を引いていた際（さい）にたまたま目（め）に入った。読（よ）んでみたところ「これって今（いま）でいうところの熱中症（ねっしゅうしょう）だよな。漢字（かんじ）があったのか」という印象（いんしょう）だった。『諸橋（もろはし）大漢和（だいかんわ）』に依（よ）ると、意味（いみ）は[hè | ｴﾂ | ｵﾁ]と読（よ）む場合（ばあい）、「あつさあたり」。[ｱﾂ｜ｱﾁ]と読（よ）む場合（ばあい）は「あたたかい」。[ｶﾂ｜ｶﾁ]と読（よ）む場合（ばあい）は「熱（あつ）い」。暑（あつ）さ中（あた）りとか暑気（しょき）中（あた）りは暑（あつ）さで病気（びょうき）になる事（こと）で、現在（げんざい）の日本版（にっぽんばん）𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎にも熱中症（ねっしゅうしょう）と同（おな）じ項目（こうもく）に入れられているが、熱中症（ねっしゅうしょう）とは別扱（べつあつ）いになっており、夏（なつ）痩（や）せと同義（どうぎ）になっている。現在（げんざい）の和風（わふう）定義（ていぎ）でどう異（こと）なっているのかは未確認（みかくにん）。

　熱中症（ねっしゅうしょう）で死（し）ぬことは暍死（えっし）というらしい。熱中（ねっちゅう）症（しょう）患者（かんじゃ）は暍人（えつじん）。暍疾（えっしつ）は暑気（しょき）中（あた）りの病気（びょうき）。なので熱中症（ねっしゅうしょう）という事（こと）だろう。こういう時（とき）は部首（ぶしゅ）を疒（やまいだれ）にして揃（そろ）える方（ほう）が好（よ）かったりするが、そうすると𤸎疾（えっしつ）。この、「同（おな）じ部首（ぶしゅ）で揃（そろ）える」という視点（してん）は造字（ぞうじ）や造語（ぞうご）でたまに見られるので知（し）っておいても良（い）いと思（おも）う。トカゲは漢字（かんじ）で蜥蜴と書（か）くとおぼえた人（ひと）もいるだろうが、「易」単独（たんどく）で既（すで）にトカゲの意味（いみ）を持（も）っている。トカゲの象形（しょうけい）文字（もじ）由来（ゆらい）とも言（い）われている。蜥と共（とも）に蜥易と書（か）いてトカゲを表し、さらに部首（ぶしゅ）を揃（そろ）えて蜥蜴になっている。面白（おもしろ）いのは易の方で、これは難易度（なんいど）の易。つまり簡単（かんたん）という意味（いみ）で認識（にんしき）されているが、元々（もともと）は敡という字で、攴が取（と）れて易になってしまったらしい。意味（いみ）がいろいろ出（で）て来（き）たので区別（くべつ）をする為（ため）に部首（ぶしゅ）を追加（ついか）するというのは割（わり）とある事（こと）だが、部首（ぶしゅ）が取（と）れて部首（ぶしゅ）が追加（ついか）された字と入れ替わってしまった事例（じれい）は少（すく）ないんじゃないかと思（おも）う。

　「暍」と同（おな）じ意味（いみ）の漢字（かんじ）としては「㷎」と「𤸎」があり、㷎は[ｴﾂ | ｵﾁ]と読（よ）み、𤸎は[ｶﾂ｜ｶﾁ｜ｴﾂ｜ｵﾁ]と読（よ）む場合（ばあい）が「暍」と同義になる。「中」は今（いま）の日本語（にほんご）では普通（ふつう）、𝐢𝐧𝐬𝐢𝐝𝐞（インサイドゥ）や𝐦𝐢𝐝𝐝𝐥𝐞（ミドゥル）の意味（いみ）合いで名詞（めいし）や副詞（ふくし）として使（つか）うが、「当（あ）たる𝐡𝐢𝐭（ヒットゥ）﹐𝐬𝐭𝐫𝐢𝐤𝐞（ストゥライク）」の意味（いみ）合いで動詞（どうし）としても使（つか）える。毒に当（あ）たると中毒（ちゅうどく）と呼ぶ。じゃあ「暑（あつ）さに当（あ）たる」のは中暑（ちゅうしょ）じゃないのか？と思（おも）えるが、中暑（ちゅうしょ）という言葉（ことば）もあるらしい。逆（ぎゃく）にして暑中（しょちゅう）だと「暑（あつ）いなか」だろう。熱中症（ねっしゅうしょう）や夏（なつ）バテ気味（ぎみ）の人（ひと）には「暑中（しょちゅう）お見舞（みま）い申し上（あ）げます」ではなく「中暑（ちゅうしょ）お見舞（みま）い申し上（あ）げます」の方が適切（てきせつ）かも知（し）れない。熱中症（ねっしゅうしょう）で入院（にゅういん）している人（ひと）に中暑（ちゅうしょ）見舞（みま）いの葉書（はがき）を出（だ）したら馬鹿（ばか）にしているのか？と言（い）われそうだ(笑)　暑中（しょちゅう）の反意語（はんいご）は寒中（かんちゅう）。暑気（しょき）の反意語（はんいご）は寒気（かんき）。しかし寒（さむ）さ中（あた）りというのは聞（き）かないし、気象（きしょう）では暖気（だんき）と呼ぶ。なお、寒気（かんき）は[さむけ]とも読（よ）むが、暑気（しょき）も[あつけ]と読（よ）んで構（かま）わないらしい。こういうのは自動（じどう）フリガナプログラムの大敵（たいてき）。恐（おそ）らく自動（じどう）翻訳（ほんやく）や人工（じんこう）知能（ちのう）も苦労（くろう）しているんじゃないかと思（おも）う。

　そのあと、暍疾（えっしつ）に関（かん）して何（なに）か資料（しりょう）は無（な）いかとネットで検索（けんさく）してみたところ、

星秋夫（ほしあきお）﹐ 樫村修生（かしむらおさむ）﹐ ❛熱中症（ねっしゅうしょう）の語源（ごげん）と定義（ていぎ）❜﹐ ❝桐蔭（とういん）スポーツ科学（かがく）❞𝐍𝐨․ 𝟏 ﹐ 𝐩𝐩․ 𝟑−𝟗（ｷｭｳ）﹐ 𝟐𝟎𝟏𝟖年（ねん）﹦平成（へいせい）𝟑𝟎年（ねん）𝟐月（にがつ）𝟐𝟖日（にじゅうはちにち）

という論文（ろんぶん）がみつかった。ここに、日本（にほん）での熱中症（ねっしゅうしょう）の使（つか）われ方（かた）の経緯（けいい）が簡単（かんたん）ながら触（ふ）れられている。暍病（えつびょう）という言葉（ことば）は割（わり）と最近（さいきん）まで日本（にほん）でも使（つか）われていたらしい。なお、論文中（ろんぶんちゅう）の「表（ひょう）𝟑 𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎における熱中（ねっちゅう）症（しょう）分類（ぶんるい）」は「表（ひょう）𝟐 𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟗（ｷｭｳ）における熱中（ねっちゅう）症（しょう）分類（ぶんるい）」と中身（なかみ）が同（おな）じになっていると共（とも）に、𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎での分類（ぶんるい）番号（ばんごう）と異（こと）なっているので、恐（おそ）らく間違（まちが）いではないかと思（おも）う。𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎では𝐓𝟔𝟕․𝟎〜𝐓𝟔𝟕․𝟗（ｷｭｳ）が熱及（およ）び光線（こうせん）の作用（さよう）𝐄𝐟𝐟𝐞𝐜𝐭（イフェクツ） 𝐨𝐟（オヴ） 𝐡𝐞𝐚𝐭（ヒートゥ） 𝐚𝐧𝐝（エンドゥ） 𝐥𝐢𝐠𝐡𝐭（ライトゥ）に相当（そうとう）する。

　𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟗（ｷｭｳ）では熱中症（ねっしゅうしょう）に相当（そうとう）する語（ご）として𝐈𝐜𝐭𝐮𝐬 𝐬𝐨𝐥𝐚𝐫𝐢𝐬（イクタス・ソーラリス）が、𝟏𝟗𝟒𝟎年（ねん）﹦昭和（しょうわ）𝟏𝟓年（ねん）の飯島（いいじま）論文（ろんぶん）では𝐈𝐧𝐬𝐨𝐥𝐚𝐭𝐢𝐨𝐧（インサレイシャン）が暍病（えつびょう）と対応（たいおう）して紹介（しょうかい）されている。世界（せかい）保健（ほけん）機関（きかん）のサイトでは𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟎−𝟐𝟎𝟏𝟔にどちらも出現（しゅつげん）せず、検索（けんさく）すると𝐓𝟔𝟕に誘導（ゆうどう）される。𝐈𝐂𝐃（ｱｲｽｨｰﾃﾞｨｰ）−𝟏𝟏−𝟐𝟎𝟏𝟖では誘導（ゆうどう）すらされない。未整備（みせいび）なのか死語（しご）扱（あつか）いなのかは不明（ふめい）。

　という事（こと）で地学（ちがく）の話（はなし）なのか生物（せいぶつ）の話（はなし）なのか体育（たいいく）の話（はなし）なのか国語（こくご）の話（はなし）なのか社会（しゃかい）の話（はなし）なのかわかり辛（づら）い中身（なかみ）になってしまった。普段（ふだん）の日記（にっき）でも分類（ぶんるい）しにくい内容（ないよう）が多（おお）いのでいつもの事（こと）だが、ブログは表題（ひょうだい）やカテゴリの設定（せってい）をしないといけないので迷（まよ）う。結局（けっきょく）は情報（じょうほう）処理（しょり）だよなぁということでカテゴリを情報（じょうほう）処理（しょり）にし、漢字（かんじ）の話題（わだい）久しぶりだよなぁと漢字（かんじ）の話題（わだい）で使（つか）っている表題（ひょうだい）を使（つか）ってみたが、発端（ほったん）は「甲子園（こうしえん）も始（はじ）まった事（こと）だし、そろそろ熱中（ねっちゅう）症（しょう）対策（たいさく）の話題（わだい）でもしようか」だった。