喉元過ぎれば熱さを忘れる

　私的（してき）な日記（にっき）の方ではもう毎年（まいとし）この時期（じき）の定番（ていばん）になっている話題（わだい）なのだが、テレヴィで連日（れんじつ）猛暑（もうしょ）の話が紹介（しょうかい）される一方（いっぽう）、私（わたし）はそれほど暑（あつ）くは感（かん）じていないというずれがある。

　もちろん夏（なつ）だから暑（あつ）いは暑（あつ）い。しかし夏（なつ）に暑（あつ）いのは当たり前（まえ）だし、その中でも多少（たしょう）涼（すず）しい日もあるし、雨のあとは多少（たしょう）下（さ）がったりもするし、風の強さも日によって違（ちが）う等、日々（ひび）変化（へんか）している。一方（いっぽう）テレヴィでは猛暑（もうしょ）だ熱中（ねっちゅう）症（しょう）だエアコンつけろの一点張りで差が無（な）い。いわゆる馬鹿（ばか）の一（ひと）つおぼえというもの。地形（ちけい）的に内陸（ないりく）や盆地（ぼんち）が暑（あつ）いのは当たり前（まえ）だし、そういうところは元々（もともと）暑（あつ）い。日中（にっちゅう）暑（あつ）くても夜は意外（いがい）と涼（すず）しかったりする場合（ばあい）もあるし、夏（なつ）の終わりは早々（そうそう）に涼（すず）しくなったりという場合（ばあい）もある。そういう時は伝えない。

　今年（ことし）は例年（れいねん）定番（ていばん）の埼玉（さいたま）県北部（ほくぶ）北西（ほくせい）域熊谷（くまがや）市は言（い）わなくなった。理由（りゆう）は知らないが、他がもっと暑（あつ）くなったからだろうか？熱中（ねっちゅう）症（しょう）の危険（きけん）は医者（いしゃ）の方が積極（せっきょく）的に宣伝（せんでん）をしているので命に関（かか）わる問題（もんだい）と危機（きき）意識（いしき）を煽（あお）っている。冷房（れいぼう）が嫌いな人もいるからだろう。しかしカヴァーもかけたままで使（つか）う準備（じゅんび）すらしていないのは問題（もんだい）だ。金銭（きんせん）面の問題（もんだい）があるのなら北海道（ほっかいどう）の暖房（だんぼう）費のように支援（しえん）は必要（ひつよう）だろう。ただ、お年寄（としよ）りの数は増えているし、寿命（じゅみょう）も伸びて熱中（ねっちゅう）症（しょう）で死ねるお年寄（としよ）りが増えているという点（てん）もある。昔（むかし）だったら熱中（ねっちゅう）症（しょう）で死ぬ前（まえ）に病気（びょうき）で死んでいたろう。居住（きょじゅう）環境（かんきょう）の変化（へんか）もある。マンション暮（ぐ）らしのお年寄（としよ）りも増えているし、都市（とし）化（か）した場所（ばしょ）に住んでいるお年寄（としよ）りも多（おお）い。昔（むかし）は周囲（しゅうい）が田んぼだらけだった場所（ばしょ）でも今は住宅（じゅうたく）で埋め尽くされている場所（ばしょ）は少なくない。

　それでも熱中（ねっちゅう）症（しょう）で亡くなる人は年間𝟏𝟎𝟎𝟎人ほどだそうで、自動車（じどうしゃ）事故（じこ）で亡くなる人の方が𝟑倍も多（おお）い。車に乗ったり自動車（じどうしゃ）が走っている道を歩く事に関して「命に関（かか）わります。家に居ましょう」……とは言（い）わない。

　「昔（むかし）はこれほど暑（あつ）くなかった」と話す人もテレヴィでちらほら居るのだが、個人的（こじんてき）には前世紀（ぜんせいき）に比べてそれほど極端（きょくたん）に暑（あつ）くなったとは感（かん）じない。暑（あつ）い日（ひ）が増えたとは思（おも）う。昔（むかし）は熱帯夜（ねったいや）と言（い）えば晩夏（ばんか）の大阪（おおさか）名物（めいぶつ）だったが、今では東京（とうきょう）も他も変（か）わらないし、𝟗月（くがつ）𝟏𝟎月（じゅうがつ）でも夏（なつ）のような日は増えたと感（かん）じている。しかし、暑（あつ）い日（ひ）自体（じたい）は昔（むかし）もあった。そして冷房（れいぼう）なしでもそれなりに過ごしていた。

　「三種（さんしゅ）の神器（じんぎ）」「新三種（しんさんしゅ）の神器（じんぎ）」なんて歴史（れきし）用語（ようご）としてしか知らない私（わたし）でも小さいころは冷房（れいぼう）が家に𝟏台、居間（いま）にしか無かった。当時（とうじ）は冷房（れいぼう）と暖房（だんぼう）が別々（べつべつ）。かといって居間（いま）で寝（ね）るわけでもなく寝室（しんしつ）で窓を開（あ）けたり扇風機（せんぷうき）をつけたりして寝（ね）ていた。子供（こども）に扇風機（せんぷうき）を当てっ放しで寝（ね）かせて凍死（とうし）させた事件（じけん）があった事から、扇風機（せんぷうき）は首振（くびふ）り＆タイマーが常だった。

　田舎（いなか）へ行くと寝室（しんしつ）にエアコンがついていたので快適（かいてき）だったが、逆（ぎゃく）に母屋（おもや）には冷房（れいぼう）が無かった。のちにつけたがほとんど使（つか）っていなかった。一日中（いちにちじゅう）つけたりするようになったのはこの数年（すうねん）の話。

　家でもその後（ご）寝室（しんしつ）にエアコンが設置（せっち）されたが、寝（ね）る前（まえ）に部屋（へや）を冷やして消してから寝（ね）る事が多（おお）かった。人生（じんせい）の半分（はんぶん）以上（いじょう）はエアコンの無（な）い部屋（へや）で寝（ね）ており、エアコンがある部屋（へや）に寝（ね）起きしていた時期（じき）でも使（つか）うのは夜寝（ね）る時だけ。昼に使（つか）うとしたら帰宅（きたく）直後（ちょくご）の𝟑𝟎分ほどや来客（らいきゃく）時のみ。

　じゃあその分今より涼（すず）しかったのかと言（い）えば、そういう感覚（かんかく）は無（な）い。暑さは今も昔（むかし）も変（か）わっていないというか、今住んでいる場所（ばしょ）は浜風（はまかぜ）の影響（えいきょう）を受けるし緑もまだ残っているので天気（てんき）予報（よほう）で言っているほどの暑さはない。前日（ぜんじつ）の予想（よそう）気温（きおん）より当日（とうじつ）の最高（さいこう）気温（きおん）が𝟏℃くらい低い事も多（おお）い。そうなるとニュースでは紹介（しょうかい）しない。

　冷房（れいぼう）になれると冷房（れいぼう）なしでは居られなくなる。体が暑さに慣れにくい。以前（いぜん）は𝟖月お盆のころが一番（いちばん）暑（あつ）かったのでそのころ冷房（れいぼう）をつける想定（そうてい）で、𝟕月はつけずに体を慣らしていた。𝟕月を冷房（れいぼう）なしで乗り切ると𝟖月は意外（いがい）と大丈夫なもの。あまり冷房（れいぼう）を使（つか）うと冷房（れいぼう）病とも言（い）われるくらい、夏（なつ）の後半（こうはん）になると体が懈（だる）くなってくる。

　我慢（がまん）比べをする趣味（しゅみ）は無（な）いのでもちろん暑さ対策（たいさく）はする。また、人によって住んでいる場所（ばしょ）や住居（じゅうきょ）の構造（こうぞう）が違（ちが）うので、あくまで私（わたし）の事例（じれい）になる。冬（ふゆ）でも夏（なつ）でも住居（じゅうきょ）の立地（りっち）と構造（こうぞう）は生活（せいかつ）の質にかなり影響（えいきょう）が大（おお）きいと感（かん）じる。これも私（わたし）の体験（たいけん）した範囲（はんい）でまた触れてみたいと思（おも）う。もうある程度（ていど）準備（じゅんび）はしてあるのだが、いろいろ話題（わだい）があって何ヶ月（かげつ）か経ってしまった(笑)　とりあえずその前（まえ）に、私（わたし）の感（かん）じている感覚（かんかく）は記憶（きおく）違いなのか本当（ほんとう）なのかを確認（かくにん）する為（ため）、最高（さいこう）気温（きおん）の資料（しりょう）を取（と）り寄せてみた。

　まずはここ一週間ほどの近所（きんじょ）の最高（さいこう）気温（きおん）記録（きろく）はこちら。

	最高（さいこう）気温（きおん）
𝟏𝟑日（じゅうさんにち）㈮	𝟏𝟒時𝟎𝟓分ごろ	𝟑𝟎․𝟕℃
𝟏𝟒日（じゅうよっか）㈯	𝟏𝟒時𝟏𝟏分ごろ	𝟑𝟑․𝟏℃
𝟏𝟓日（じゅうごにち）㈰	𝟏𝟒時𝟑𝟓分ごろ	𝟑𝟓․𝟖℃
𝟏𝟔日（じゅうろくにち）㈪	𝟏𝟑時𝟑𝟑分ごろ	𝟑𝟐․𝟖℃
𝟏𝟕日（じゅうしちにち）㈫	𝟏𝟒時𝟒𝟏分ごろ	𝟑𝟑․𝟒℃
𝟏𝟖日（じゅうはちにち）㈬	𝟏𝟑時𝟏𝟗分ごろ	𝟑𝟑․𝟖℃
𝟏𝟗日（じゅうくにち）㈭	𝟏𝟒時𝟎𝟗分ごろ	𝟑𝟑․𝟖℃
𝟐𝟎日（はつか）㈮	𝟏𝟐時𝟓𝟕分ごろ	𝟑𝟑․𝟕℃

　報道（ほうどう）は全国（ぜんこく）で最も高い場所（ばしょ）ばかり紹介（しょうかい）する偏（かたよ）った情報（じょうほう）処理（しょり）なので𝟑𝟓℃だ𝟑𝟖℃だ𝟒𝟎℃だと言っているが、おおむね安定している。ちなみに昨日（きのう）の宮崎（みやざき）県平野（へいや）南部（なんぶ）宮崎（みやざき）市の𝟐𝟒時間（じかん）の気温（きおん）の推移（すいい）はこう。

𝟏 時	𝟐𝟔․𝟒℃
𝟐 時	𝟐𝟓․𝟕℃
𝟑 時	𝟐𝟓․𝟒℃
𝟒 時	𝟐𝟓․𝟗℃
𝟓 時	𝟐𝟔․𝟎℃
𝟔 時	𝟐𝟔․𝟎℃
𝟕 時	𝟐𝟕․𝟓℃
𝟖 時	𝟐𝟖․𝟑℃
𝟗 時	𝟐𝟖․𝟒℃
𝟏𝟎 時	𝟑𝟎․𝟓℃
𝟏𝟏 時	𝟐𝟗․𝟒℃
𝟏𝟐 時	𝟐𝟗․𝟓℃
𝟏𝟑 時	𝟐𝟖․𝟐℃
𝟏𝟒 時	𝟐𝟔․𝟖℃
𝟏𝟓 時	𝟐𝟖․𝟕℃
𝟏𝟔 時	𝟐𝟗․𝟓℃
𝟏𝟕 時	𝟐𝟖․𝟖℃
𝟏𝟖 時	𝟐𝟖․𝟕℃
𝟏𝟗 時	𝟐𝟖․𝟐℃
𝟐𝟎 時	𝟐𝟕․𝟖℃
𝟐𝟏 時	𝟐𝟕․𝟓℃
𝟐𝟐 時	𝟐𝟕․𝟔℃
𝟐𝟑 時	𝟐𝟕․𝟐℃
𝟐𝟒 時	𝟐𝟕․𝟎℃

　西日本（にしにほん）でも𝟑𝟎℃にほとんど達していない。宮崎（みやざき）県は全般（ぜんぱん）的に気温（きおん）が低め。台風（たいふう）の雲の影響（えいきょう）を受けているとみられるが、台風（たいふう）真っただ中の沖縄（おきなわ）は暑（あつ）い。台風（たいふう）が高気圧（きあつ）を強めていると解説（かいせつ）もされているが、だからってどこも暑（あつ）い訳じゃない事も判（わか）る。天気（てんき）予報（よほう）はどこも判で押（お）したように同じ事を言（い）う人が多（おお）いが、画面（がめん）に映っているものをよく視（み）ると違和感（いわかん）を感（かん）じる事もあるので、情報（じょうほう）処理（しょり）の訓練（くんれん）には向いているかも知れない。ちゃんとした資料（しりょう）はそのあとで確認（かくにん）すればいい。

　さて、同じように前世紀（ぜんせいき）の私（わたし）が住んでいた場所（ばしょ）の「小学校（しょうがっこう）の夏（なつ）休（やす）み」の時期（じき）の最高（さいこう）気温（きおん）記録（きろく）から、それぞれ暑（あつ）かった𝟖日ほどを抜き出（だ）してみる。




　当時（とうじ）まだ「猛暑日（もうしょび）」という言葉（ことば）は無かったが、連日（れんじつ）猛暑日（もうしょび）の年もちゃんとある。そして外で遊んだり塾（じゅく）や学校（がっこう）へ行っていた。建物（たてもの）に冷房（れいぼう）が無かった年も含まれている。外へ出（で）ればこの暑さの中、自転車（じてんしゃ）で登下校（とうげこう）したり登山したりほぼ無風（むふう）の野球（やきゅう）場で直射（ちょくしゃ）日光（にっこう）に当たりながら野球（やきゅう）観ていたりもした。それでも熱中（ねっちゅう）症（しょう）で倒れた人は女性（じょせい）も男性（だんせい）も出（で）なかった。最近（さいきん）の報道（ほうどう）の仕方（しかた）は、数字（すうじ）によるマインドコントロールも入（はい）っていると感（かん）じる。「心頭（しんとう）滅却（めっきゃく）すれば火（ひ）も亦（また）涼（すず）し」といった精神論（せいしんろん）を押（お）し付けるつもりはないし、無理（むり）せず体調（たいちょう）を視（み）ながら行動（こうどう）する事を重視（じゅうし）した方が良（い）いとは私（わたし）も思（おも）うが、心が先に「熱中（ねっちゅう）症（しょう）になるかも知れない」と思い込んでしまうと、それで体調（たいちょう）が悪くなってしまうという点（てん）も気をつけないといけない。

　ちなみに今年（ことし）猛暑（もうしょ）で話題（わだい）の岐阜（ぎふ）県美濃（みの）部東濃（とうのう）域多治見（たじみ）市、比較（ひかく）的猛暑（もうしょ）だったらしい𝟏𝟗𝟗𝟒年﹦平成（へいせい）𝟔年の夏（なつ）の最高（さいこう）気温（きおん）はこちら。

𝟏𝟗𝟗𝟒年
平成（へいせい）𝟔年
𝟖月（はちがつ）𝟐日（ふつか）	38.3℃
𝟖月（はちがつ）𝟑日（みっか）	38.4℃
𝟖月（はちがつ）𝟒日（よっか）	39.7℃
𝟖月（はちがつ）𝟓日（いつか）	39.8℃
𝟖月（はちがつ）𝟔日（むいか）	37.4℃
𝟖月（はちがつ）𝟕日（なのか）	39.7℃
𝟖月（はちがつ）𝟖日（ようか）	38.5℃

　𝟐𝟎年已上（いじょう）前でも大して変（か）わらない。平年（へいねん）は過去（かこ）𝟑𝟎年の平均（へいきん）で出（だ）すから高い年も低い年も含まれる。情報（じょうほう）処理（しょり）の初歩（しょほ）的留意（りゅうい）点だが、𝟏𝟎𝟎点（てん）と𝟎点（てん）が𝟏人ずつでも𝟓𝟎点（てん）が𝟐人でも平均（へいきん）点は同じ𝟓𝟎点（てん）。平年（へいねん）に頼（たよ ）っていてはこういう日々（ひび）の実態（じったい）はわからない。分析（ぶんせき）に問題（もんだい）がある。