𝐒𝐔𝐑𝐔𝐌𝐄 𝐓𝐈𝐍𝐘 𝐀𝐍𝐃 𝐓𝐈𝐑𝐄𝐃

　ラジオで地球（ちきゅう）の地図（ちず）を印刷（いんさつ）したビーチボールというのが紹介（しょうかい）されていた。これの事だろう。

ほぼ日のアースボール

　実は類似（るいじ）の発想（はっそう）は前世紀（せいき）、既（すで）にあった。正確（せいかく）には「ボール代わりに遊べる」と謳（うた）っていた訳ではないが。𝟏𝟗𝟗𝟒年﹦平成（へいせい）𝟔年（ろくねん）ごろだったと思（おも）うが、文房具（ぶんぼうぐ）屋で𝟓𝟎𝟎円か𝟔𝟎𝟎円くらいで売っていたのをみつけて、当時（とうじ）手元（てもと）に地球儀（ちきゅうぎ）が無かったので買（か）ってみた事がある。個人的（こじんてき）にはそれが家にあった地球儀（ちきゅうぎ）としては二代目（にだいめ）。

　物は空気（くうき）を入れて膨らませ、プラスティック製𝟐部品（ぶひん）から成る架台（かだい）に差（さ）し込んで使（つか）う。上記（じょうき）のアースボールの説明（せつめい）では軸を無くした旨を主張（しゅちょう）しているが、この時の物は、ビーチボールの空気（くうき）を入れる口（くち）のように、蓋をして凹（へこ）ませて平らにすると、そこに穴が在って、架台（かだい）に付いた出っ張りに挿（さ）し込む方式（ほうしき）。もちろん挿（さ）し込まなくても構（かま）わない。

　架台（かだい）を使（つか）わなければただのボールと変（か）わらない。大（おお）きさは直径（ちょっけい）𝟐𝟎㎝（センチ）くらいだったと思（おも）う。ボールとして作られた物ではないので弾力（だんりょく）性は乏しかったが、紙風船（ふうぜん）よりはよほど反発力があり、部屋（へや）の壁に当てて遊んでいた。普段（ふだん）はその辺に適当（てきとう）に置いてあって、架台（かだい）を使（つか）った事はほとんどなかったと思（おも）う。使（つか）い方としてはアースボールが想定（そうてい）した物とほとんど同じ発想（はっそう）だろう。単（たん）に売り手側が最初（さいしょ）から使（つか）い方を教えるか、自分（じぶん）で考（かんが）えて本来（ほんらい）の想定（そうてい）とは違った使（つか）い方をしたかだけの違い。

　結局（けっきょく）ボールとして遊び過ぎて穴が開き、膨らまなくなったので捨てた事から現在（げんざい）手元（てもと）にそれは無（な）い。今だったら自転（じてん）車のパンク修理（しゅうり）用の糊が入ったスプレーを注射（ちゅうしゃ）して内部（ないぶ）から穴を塞（ふさ）げば直せたかな？と思ったりするが、当時（とうじ）身近（みぢか）に百円（ひゃくえん）均一（きんいつ）というのは存在（そんざい）しなかったし、そういったスプレーの存在（そんざい）も知らなかった。

　ちなみに初代の地球儀（ちきゅうぎ）は直径（ちょっけい）𝟑𝟎〜𝟒𝟎㎝（センチ）くらいの重たい木製（もくせい）で、取（と）り外しはできなかった。仮にできたとしてもボールとして遊ぶには危険（きけん）だったろう。どこで買（か）ったかもらったか知らないが恐らく外国（がいこく）製で、印字（いんじ）は全て英語（えいご）だった。今ならあれが英語（えいご）だったのだなと判るが、物心ついたころには既（すで）に存在（そんざい）していたので、英語（えいご）だとかラテン文字（もじ）で書（か）いてあるという感覚（かんかく）は無かった。単（たん）に「何て書（か）いてあるのか読めない」という印象（いんしょう）だけ。読み方を教（おそ）わった事は無かった。幼稚園（ようちえん）から低学年（ていがくねん）ごろにかけて世界（せかい）の国名（こくめい）は大方（おおかた）おぼえてしまっていたので、のちには何が書（か）いてあるのか国名（こくめい）の知識（ちしき）から想像（そうぞう）する事はできたが、読み難いという印象（いんしょう）しかなく、地球儀（ちきゅうぎ）に関心（かんしん）を持った事はほとんど無かった。実用（じつよう）としても、私が𝟓歳（ごさい）ごろに、飛行（ひこう）経路（けいろ）のつもりで書（か）いた線が周回（しゅうかい）しており、それが油性（ゆせい）ペンだったものだから消（け）せずに残って邪魔なだけだった。実際（じっさい）の航路（こうろ）とは全（まった）く違っており、どうしてその経路（けいろ）になったのか自分（じぶん）でも不思議（ふしぎ）だったが、当時（とうじ）は自分（じぶん）では書けたつもりだった(笑)

　そんな訳で、個人的（こじんてき）には地球儀（ちきゅうぎ）はおもちゃ程度（ていど）の記憶（きおく）しか無（な）い為（ため）、学習（がくしゅう）の素材（そざい）という認識（にんしき）は無（な）い。なので地球儀（ちきゅうぎ）の宣伝（せんでん）でさまざまな国の情報（じょうほう）が得られる事を謳（うた）っているのが「そんなに勉強（べんきょう）目的（もくてき）で考（かんが）えなくても。どうせ中学（ちゅうがく）まで世界（せかい）の地理（ちり）はやらないし」と大袈裟（おおげさ）に感（かん）じる。今回（こんかい）のアースボールもスマートフォンと連動（れんどう）してさまざまな国の情報（じょうほう）を覧る事ができるらしい。パソコンやインターネットと連動（れんどう）した地球儀（ちきゅうぎ）はもう𝟏𝟎年くらい前（まえ）から出ているんじゃなかろうか？已前（いぜん）テレヴィコマーシャルで見た記憶（きおく）がある。私は国名（こくめい）；首都名；国旗（こっき）はトイレに貼られた世界（せかい）地図（ちず）で、国のさまざまな情報（じょうほう）は朝日（あさひ）年鑑（ねんかん）や国勢（こくせい）図絵（ずえ）；イミダス等の統計（とうけい）資料（しりょう）；日々（ひび）のニュースや特集（とくしゅう）；家庭（かてい）内の団欒（だんらん）などから記憶（きおく）していった口（くち）で、加えて地形（ちけい）や地域（ちいき）の特色；産業（さんぎょう）などは中学校（ちゅうがっこう）と高校（こうこう）の地理（ちり）；大学（だいがく）入試（にゅうし）の模擬（もぎ）試験（しけん）の地理論述（ちりろんじゅつ）；学校（がっこう）での雑談（ざつだん）などもあるので、長期（ちょうき）的かつ多様（たよう）な手段（しゅだん）で身につけていっている。だから「○（まる）○（まる）が影響（えいきょう）した」とか「どれが良（い）い」といった言（い）い方はできない。こういうのは面接（めんせつ）担当（たんとう）者が嫌うので、「推薦（すいせん）；𝐀𝐎（ｴｲｵｳ）を目指（めざ）す学生（がくせい）や就活（しゅうかつ）学生（がくせい）が読んではいけないお話（はなし）」になるだろうが。「○（まる）○（まる）が大（おお）きな影響（えいきょう）」とか「××（ばつばつ）の為（ため）に△△しました」と、全ての物事（ものごと）が一言（ひとこと）で言（い）えて思考（しこう）と行動（こうどう）が短絡（たんらく）的に直結していないと優秀（ゆうしゅう）な人材（じんざい）ではないらしい。当然（とうぜん）、それで成功体験（たいけん）を経て育った人には、「全ての行動（こうどう）は打算（ださん）的に行われている。それ已外（いがい）は有り得ない」という𝟎次元（じげん）的思考（しこう）をし始（はじ）める人が少なくないようで、長期（ちょうき）的かつ多様（たよう）な手段（しゅだん）でなんとなく身に付いた話をしようとしても日本語（にほんご）が通じなくて困っている。個人的（こじんてき）に縦の方言（ほうげん）を最もよく感（かん）じるのがこの手の相違（そうい）。同様（どうよう）に意識（いしき）無くして身に付けた事が少なからずある人は、世（よ）の中（なか）には短絡（たんらく）的思考（しこう）が絶対（ぜったい）と思っている人は少なくないという事を知っておいた方が良（い）いだろう。

　ついでなので情報（じょうほう）処理（しょり）の話題（わだい）もしておくが、情報処理力（じょうほうしょりりょく）の低い人は、そういったあいまいで多様（たよう）な条件（じょうけん）や事例（じれい）が並（なら）ぶと感情（かんじょう）的に処理（しょり）しきれなくなって特定（とくてい）の結論（けつろん）に集約（しゅうやく）させるという展開（てんかい）が多（おお）くみられる。先ほどの要素（ようそ）を使（つか）って、さらに追加（ついか）も書けば

実際（じっさい）に訪れている
訪れていた人から聞いた
トイレに貼られた世界（せかい）地図（ちず）
朝日（あさひ）年鑑（ねんかん）や国勢（こくせい）図絵（ずえ）、イミダス等の統計（とうけい）資料（しりょう）
日々（ひび）のニュースや特集（とくしゅう）
家庭（かてい）内の団欒（だんらん）
中学地理（ちゅうがくちり）
高校（こうこう）の地理（ちり）
大学（だいがく）入試（にゅうし）の模擬（もぎ）試験（しけん）の地理論述（ちりろんじゅつ）
学校（がっこう）での雑談（ざつだん）

という経路（けいろ）が出てくる事になるが、感情（かんじょう）的に受け入れられないと、「そんな事は有り得ない」「ウソに違いない」、今なら「ネットで調べたに違いない」……という話に変更（へんこう）し始（はじ）める。そして、𝟏（ひと）つでも本やネット、あるいは「中学（ちゅうがく）地理（ちり）」、つまり学校（がっこう）や塾（じゅく）で習ったという項目や経験（けいけん）があると安心をし、そこへ結論（けつろん）を集約（しゅうやく）させる。

「あなたは普段（ふだん）何を食べていますか？」
「イタリアンとか中華とか和食とか。特に決まっていない」
「そんなわけないだろう。ハンバーガーを食べた事あるか？」
「あります。」
「ほらやっぱり。ウソをついていた。彼はいつもファストフードを食べている。」

　こういう話にするといかにおかしな話か解かりやすいと思（おも）う。本質（ほんしつ）的にこれと同じ話が起こる。

　逆（ぎゃく）に中学（ちゅうがく）や高校（こうこう）の地理（ちり）；模試（もし）といった項目を並（なら）べているという事は、学校（がっこう）の授業（じゅぎょう）や教科（きょうか）からでも学べる内容（ないよう）はたくさんあるという事でもあるが、今度（こんど）は「学校（がっこう）の勉強（べんきょう）なんて役に立たない」「勉強（べんきょう）は楽しいものじゃない。親に言（い）われて嫌々やらされていたに違いない」と学校（がっこう）教育（きょういく）に敵意を持つ人もいて、そういう人相手（あいて）には「それは中学（ちゅうがく）の時に地理（ちり）の授業（じゅぎょう）で出て来（き）た」と言っても苦虫（にがむし）噛（か）み潰（つぶ）して不機嫌（きげん）になったりする。全ての人が学校（がっこう）の勉強（べんきょう）が嫌いだったり習った内容（ないよう）を生活（せいかつ）に応用（おうよう）する事はできないという話でないといけなくなってきて、義務（ぎむ）からの解放と自由（じゆう）を謳（うた）う人でも意外（いがい）と自由（じゆう）が無かったりする。

　他に、本やネットや学校（がっこう）や塾（じゅく）や受験（じゅけん）を持ち出（だ）すと、そればかりで現地（げんち）に行った事が無（な）いに違いない；実際（じっさい）にやったことがないに違いない。だから解からない決まっている……という大前提（ぜんてい）で予断をもって接してくる人もいる。すると、行った事があったりやったことがある部分（ぶぶん）がウソになるか無かったことになるか、そこまで話が進まないかということになる。デマ発生（はっせい）の瞬間（しゅんかん）。どれか一（ひと）つに絞れない人は気を付けた方が良（い）い。話せば話すほど面倒（めんどう）なことになるだけなので、黙って知りません；できませんとして相手（あいて）に有利（ゆうり）を感（かん）じさせている方が面倒（めんどう）は少ないと感（かん）じる。それか、最初（さいしょ）から相手（あいて）の能力（のうりょく）を見切ってどういう展開（てんかい）をするのか想定（そうてい）した上で言葉（ことば）を選んでいくか。𝐖杯（ﾜｰﾙﾄﾞｶｯﾌﾟ）でサッカー選手（せんしゅ）；関係者（かんけいしゃ）が言っていたように、ルールの範囲（はんい）だから；次のステップに進むのが目的（もくてき）；結果（けっか）が全てという考（かんが）え方の人も当然（とうぜん）いるし、そういった口八丁手八丁も「変（か）わった」「世界（せかい）に通用（つうよう）するようになった」と礼賛（らいさん）していくのであれば、これから益々増えてくるのだろうから、そちらに巻き込まれないようにする対策（たいさく）も考（かんが）えないといけない。現状（げんじょう）の人工（じんこう）知能（ちのう）と同等か既（すで）に追い越されている水準（すいじゅん）であっても、機械（きかい）と違って技術（ぎじゅつ）の発展（はってん）により旧式となって消（き）え去るという事は無（な）い。少なくとも数千年数万年単位（たんい）では。