赤城の山に出でし金かも

　今日（きょう）(𝟕月（しちがつ）𝟓日（いつか）)の『日本人（にほんじん）のおなまえっ❢』は望月（もちづき）姓の由来（ゆらい）だった。なぜ「望」と書（か）いて[もち]と読むのか？と。関東（かんとう）に多（おお）いらしい。解説（かいせつ）では平安（へいあん）時代（じだい）、満月（まんげつ）に安全（あんぜん）祈願（きがん）や豊作（ほうさく）を願ったりする風習（ふうしゅう）があった事と関連付（かんれんづ）けていた。姓氏（せいし）としては長野県（ながのけん）中部（ちゅうぶ）佐久（さく）市望月（もちづき）が発祥（はっしょう）らしい。

　つまり、望月（もちづき）とは満月（まんげつ）の事で、ここで番組（ばんぐみ）のゲストやレギュラーの反応（はんのう）が分れていた。意識（いしき）的に知っている層と知らない層を対比させてみたのかたまたまゲストの関係（かんけい）でそうなったのかは知らないが、前回（ぜんかい）も似たような意識（いしき）の違いの構図（こうず）があったので番組（ばんぐみ）による演出（えんしゅつ）もあったのかも知れない。しかし、一般（いっぱん）社会（しゃかい）でもこういう反応（はんのう）の違いは起こる。すると同じような話題（わだい）をしていても認識（にんしき）の仕方（しかた）が違っているので話がずれてくることがある。それが縦の方言（ほうげん）。そして、人間（にんげん）の反応（はんのう）はもう少し細かく分かれる。すぐに思い浮かぶところだと

①知っていて当然（とうぜん）。なぜ知らないの？他者（たしゃ）に対して優越（ゆうえつ）や怒り。
②知っているが知らない人もいるだろう。他者（たしゃ）の状態（じょうたい）は意識（いしき）しない。
③調べておぼえてきた。是非（ぜひ）喋（しゃべ）りたい。他者（たしゃ）に対する優越（ゆうえつ）を望む。
④知らない。知っている方がおかしい。自慢（じまん）だ；上から目線（めせん）だ。他者（たしゃ）に対して嫉妬（しっと）や怒り。
⑤知らない。気にしていないし興味（きょうみ）もない。他者（たしゃ）の状態（じょうたい）は意識（いしき）しない。
⑥知らないが、興味（きょうみ）はある。他者（たしゃ）の状態（じょうたい）は意識（いしき）しない。
⑦知らないが知っている人がいる。凄い。他者（たしゃ）に対して憧れ。
⑧知らないが知っている人がいる。自己（じこ）に対する劣等（れっとう）感。

　こういった反応（はんのう）の違いと、あとは組み合わせ次第（しだい）で環境（かんきょう）が決定（けってい）されていく。そして伸びる人；伸びる集団（しゅうだん）と、伸びない人；伸びない集団（しゅうだん）とに分かれていく。①④は対立やストレスの原因（げんいん）になる。③は指導者（しどうしゃ）次第（しだい）で全体（ぜんたい）が向上（こうじょう）もすれば崩壊（ほうかい）もする。⑤⑧は少数（しょうすう）なら無害（むがい）、多数（たすう）なら伸びない原因（げんいん）。⑥⑦は一番（いちばん）伸びるので数がいれば有益（ゆうえき）だが、多勢（たぜい）に無勢（ぶぜい）だと孤立（こりつ）する。

　番組（ばんぐみ）は「望月（もちづき）という苗字（みょうじ）があるからみんな読み方を知っている」という認識（にんしき）だった。今回（こんかい）の場合（ばあい）、望月（もちづき）という単語（たんご）は学校（がっこう）の古文（こぶん）で出てくるのでその認識（にんしき）が無（な）いという点（てん）で発想（はっそう）の差を感（かん）じた。また、望月（もちづき）が少ない地域（ちいき）の人にとっては別に苗字（みょうじ）に多（おお）いからという印象（いんしょう）は無（な）いだろうとも思（おも）う。私は小学校（しょうがっこう）でも大学（だいがく）以降（いこう）でも、関東（かんとう）で望月（もちづき）という人に会った記憶（きおく）が無（な）い。

　なぜ満月（まんげつ）が「月を望む」なのかは私も以前（いぜん）気になった事があって、簡単（かんたん）に調べてみた事はあるが、答えは単純（たんじゅん）、字が違った。「のぞむ」は「望󠄇(望)」で、「満月（まんげつ）」は本来（ほんらい）、「朢」という字だったらしい。音が一緒（いっしょ）で[ボウ]。という事で、平安（へいあん）時代（じだい）よりもっと前（まえ）の中国（ちゅうごく）で漢字（かんじ）が同一（どういつ）視された事が起源（きげん）じゃないかと思（おも）う。

　ちなみに「朢」は「𣍢」と略せるので、「望」をおぼえてしまっている人は、面倒（めんどう）臭かったら希望（きぼう）は希𣍢とでも書（か）いておけばいい。「朢」はこれ自体（じたい）が満月（まんげつ）の意味（いみ）なので「望月（もちづき）」と書くのが面倒（めんどう）臭いなら「𣍢」でも構（かま）わない。もっとズボラをするなら「兦」で[ボウ]と読むので一時的にはそう書（か）いておいてもいいだろう。「忘」も「㤀」と書けるしこちらの方が書きやすい。


　オマケで他に採り上げられていた姓氏（せいし）の話題（わだい）も書（か）いておく。

　出牛[でうし｜じょうし]という姓氏（せいし）は埼玉（さいたま）県秩父（ちちぶ）部秩父（ちちぶ）郡皆野（みなの）町発祥（はっしょう）で、地元（じもと）にある、川が曲がって洪水時に溢（あふ）れる場所（ばしょ）を、牛や「憂（う）し」にたとえたとされるらしい。一説には、隠れキリシタンがおり、キリスト教の神：天主（てんしゅ）を意味するポルトガル語𝐃𝐞𝐮𝐬（デウス）由来（ゆらい）の可能性（かのうせい）も否定（ひてい）できないそうな。なお、ポルトガル語デウスはラテン語𝐃𝐞𝐮𝐬由来（ゆらい）で、ラテン語では[デオ]と読む。キリスト教の神は大文字（もじ）で始（はじ）まる。ギリシャ神話（しんわ）の全能（ぜんのう）の神Ζεύς（ゼウス）とは無関係（むかんけい）。ラテン語の「神」一般（いっぱん）は小（こ）文字（もじ）で始（はじ）まる𝐝𝐞𝐮𝐬なので注意（ちゅうい）がいる。

　最後（さいご）は千田[せんだ｜ちだ]の由来（ゆらい）を𝟑（みっ）つ紹介（しょうかい）していた。①[ちだ]は平安（へいあん）時代（じだい）、現千葉県の千田荘（ちだのしょう）発祥（はっしょう）の武家（ぶけ）一族（いちぞく）➝岩手（いわて）の葛西（かさい）氏を頼（たよ ）って敗走（はいそう）➝現地（げんち）で帰農（きのう）、稲作（いなさく）指導（しどう）に活躍（かつやく）➝現在（げんざい）、東北（とうほく）＆関東（かんとう）甲信（こうしん）地方（ちほう）に多（おお）い。

　②[せんだ]は鎌倉（かまくら）時代（じだい）、現長野県（ながのけん）発祥（はっしょう）。芹田[せりた➝せむた➝せんた➝せんだ]と転訛（てんか）し、今も中部（ちゅうぶ）地方（ちほう）に多（おお）い。

　③もう一（ひと）つの[せんだ]は室町時代（じだい）、現滋賀（しが）県北部（ほくぶ）湖北（こほく）域長浜（ながはま）市木之本（きのもと）甼千田発祥（はっしょう）の千田氏からで、現在（げんざい）近畿（きんき）地方（ちほう）に多（おお）い。

　千田[せんだ]姓は中国（ちゅうごく）；四国（しこく）地方（ちほう）には少なく、九州（きゅうしゅう）では鹿児島（かごしま）と九州（きゅうしゅう）北部（ほくぶ）に少しいるらしい。