2018年01月22日

白の頌歌「寒気に寄せる」を凍結合唱に持つ、大鉄道網・四方の航空網・市井の道路網の為に作曲され、南岸・日本海・低気圧が冬将軍閣下に深い敬愛の念を以て捧げる交狂曲 作品𝟐𝟎𝟏𝟖 第Ⅰ愕章

 先日「そちも悪よのぉ」で最後に少し触れた「道天地将法」について、続きを簡単に。

 道は心の問題、将は人の問題、法は組織の問題なので、用兵に限らず現在の組織論ではしばしば話題にされる。しかし天地に関しては何かの災害に特化した個別事例で触れられることはあっても、平時の組織論・リーダー論としてはなぜか出て来ないのが不思議だが、これは集団行動であれ個人行動であれ、非常に重要な情報処理の視点になる。

 天は陰陽寒暑時制、つまり時間帯や気温や季節。地は遠近険易広狭死生、つまり距離や坂の有無、広さや高さ。そういった自然が関わる話全般を指している。現代の都市部での生活だと天候や地形に左右されずに活動できることが多いのであまり気にならないが、事故や災害が発生して原始的・アナログな活動をせざるを得ない場面になってくると、途端にこれらの視点が重要になってくる。平時でも天候によって収益が左右されやすい職業では普段から意識されていることではあるが、意識していない人は地位に限らず少なくないというのはちょっとした予想されている天候の悪化に対して何の対策もしていない人が出て来る点でも見て取れる。情報を伝えているニュース番組のアナウンサーでさえ、数日前から警告されている天気のくずれに対して、傘を持ってこなかったと笑いながら平然としている様子は意外と多い。ミスを強調することで可愛らしさ・親しみやすさをアピールしたいのかも知れないが、情報に対する意識の低さの表れとも言える。

 先日話題にした急患発生や、あるいは地震のように、突然発生した場合は予想をしていない点で状況としては平等だが、その次の行動として何を選択するかは人によって判断が異なるし、それは普段からの意識や行動による習慣づけも大いに関わってくる。何をしていいのかわからない人は、携帯電話がつながっている間に、あるいは電池が残っているうちに、天気予報を確認しておいた方がいい。そして、不案内な土地にいる場合は、地図で自分の位置や周辺の地形を。地形情報は普段から意識していないと単発で情報を仕入れてもなかなか応用が効かない面はあるが、集団であれば互いに情報を持ちよって交換することも可能なので、周辺地理にあかるい人にとっては非常に助けになる。

 これらがなぜ重要かというと、今後の行動に大きく影響する場合があるから。晴れて温かいのなら徒歩で移動することも選択肢になる。しかし、近いうちに雨が予想されていたら、とどまることも選択肢になる。短い時間の雨なら短期滞在場所を探す、長い時間の崩れで雨具を持っているのなら多少濡れても長期滞在可能な場所まで移動する、気温が下がったり風が強まるのなら早めに防寒具を手に入れておく、火災が発生の情報があり、北風が吹いているのなら南已外へ向かう、延焼が広がりそうなら海へ向かう、洪水や津波の可能性があるのなら低地を避けて移動する……考えられるパターンは山ほどある。一つ一つに対応する道具を持ち歩くことは必ずしも現実的ではないが、情報に関しては今は比較的手に入りやすい時代であるし、情報の活用法に関しては脳内に収まるので、持っていれば選択肢は圧倒的に広がる。当てずっぽうで逃げても助かることはあるし、知恵を活用して助からないこともあろうが、知らないよりは知っておいた方が良いし、細かい蘊蓄ばかり集めるよりは大きな方針を活用できる方が、おぼえることが少なく、前例の無い事態での応用がきくという利点がある。「リーダーを育てる教育」という話がたまに紹介されるが、流行のキーワードをならべたり結果的に成功した人の話をただ聴くだけ、現地に行って思い出づくりをするだけの内容と感じる一方、こういう地味だが実践的で普段からのつみ重ねを必要とする話に出くわさないのは不思議に感じる。

 天地の要素を学ぶのに意識するのは事例の細かい情報の暗記ではない。普段から気象情報を確認したり、季節の違いを感じたり、土地の風土に関する情報へちょっと耳を傾けたり、実際に現地を移動したときに違いを感じるだけでいい。最近『ブラタモリ』という𝐍𝐇𝐊でやっている番組はわりと人気があるらしいが、地形に関する話もしばしば出てきているようなので、視野を広げるには悪くないんじゃないかと思う。ただ見て知るのではなく、きっかけにして知らない場所でも感じたり知ったりすることで応用がきく。苗字の番組にしても、地形と関わっている場合は多い。天気予報はマークをみるだけで終わらせるのではなく、予報士が喋ってる内容を聞き取って、耳を慣らしておけばいい。小学生の頃から始められる。最初は意味がわからないだろうが、そのうちある程度言ってることはわかってくるし、中学になれば天気図の見方なども教わるので、基本的な情報は確認できるようになる。別に資格を目指して勉強することまでする必要はない。

 あとは国内外の災害情報や旅番組やら土産話やら、とにかく情報はその辺に転がっているので、それらをどう整理して役立てるかに関わってる。地理に関してもただ暗記して忘れるだけでは役に立たないが、こういう情報と組み合わせることで役に立ってくる。「勉強しても役に立たない」のは役に立てる能力がないだけの話だと考えておいた方がいい。
ラベル:孫子の兵法
posted by Marimó Castellanouveau-Tabasco at 23:59| 情報処理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする